大判例

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東京地方裁判所 昭和38年(ワ)1611号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実と争点〕本件土地はもと訴外山邑酒造株式会社の所有で被告において賃借中、昭和二六年ころ山邑が財産税納付の関係で所有土地を分割譲渡をはじめたので、被告も本件土地を山邑からゆずりうけ得るとの前提の下に、原告は同年四月一五日被告との間で本件土地を代金一三万円で買受ける契約をし、即日代金を支払い土地の引渡をうけた。しかるに被告と山邑との本件土地の売買問題は順調にゆかず、訴訟沙汰となり、原告は利害関係人として調停に参加し昭和三一年一二月二四日山邑から代金七四二、五〇〇円で直接本件土地を買受けて代金を支払つた。結局原告と被告との間の本件土地売買契約は被告の責に帰すべき理由により履行不能となつたので、原告は民法第五四三条に従い本訴で解除し、さきに支払つた一三万円の返還と山邑からの買受代金から右金一三万円をさしひいた残額六一二、五〇〇円の損害賠償を求める、と主張した。

被告は原告と売買契約した直後山邑の代理人訴外新郊土地建物株式会社から本件土地を代金一二万円で買受ける旨契約したが、山邑は新郊土地の代理権を認めないので、被告は山邑を相手に土地所有権移転登記請求の訴訟を提起し、事件は調停に付せられ極力努力したが目的を達することができなかつたので、被告はやむなく昭和三一年一二月二二日右事情を告げて原被告間の土地売買契約を解除し、ききに受領した一三万円は原告が受取らないので弁済供託した。原被告間の本件土地売買契約については売主たる被告は新郊土地との間に前記売買契約を締結したことにより本件土地所有権を取得したものと信じていたものであり、一方買主たる原告は契約締結当時本件土地が被告の所有に属しないことを知つていたのであるから民法第五六二条第二項により売主たる被告は買主たる原告に本件所有権を移転することができない旨を通知して契約を解除しうるものであり、この場合にはなんら損害賠償の責任は発生しないと抗争した。

判決は被告の主張を容れ原告の請求を棄却したが、民法第五六二条第二項の場合には売主の「知ラサル」ことについては過失は問題としない旨述べ、つぎのとおり説明している。

〔判決理由〕しかして右認定の事実によれば、原、被告間の本件土地売買契約については、契約締結の際には本件土地が山邑酒造の所有中であることにつき当事者間に疑義はなかつたが、被告は右契約直後新郊土地との間に前記土地の売買契約を締結したことによりその所有権を取得したと信じたものであり、かかる時間的に直近した関係にある場合には、民法第五六二条に所謂『売主カ契約ノ当時其売却シタル権利ノ自己ニ属セサルコトヲ知ラザリシ場合』に該当するものと解するに妨げなく、しかも同条の場合にはその『知ラサル』ことにつき過失を問題としないから、本件にあつて被告のなした前記契約解除の意思表示は同条第二項の要件を充足するものというべきである。(古山宏)

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